ショートショート 『行列バイト』

行列のできているラーメン屋に来ていた。
大通りに面したラーメン屋だが、最近になり行列が目立つまでは、気が付かなかった。
パッとしない印象だったが、最近になって行列が作られ始めたのだろう。
男は、列に加わわった。
30分以上並びようやく座ることができた。
隣には、男が座っていた。
その男は、チャーシューメンを頼んでおり、それと同じものを頼んだ。
最近のラーメンにしては、1200円が割高だったが、男には、関係がないことだった。
出てきたラーメンは、どこにでもあるようなもので、特に美味しいと感じることはなかったが、どこか懐かしさを感じるような味だった。
帰る途中で、来週の、ラーメンを探していた。
早めに店に行かないといけない。
そんなことを仕事中に考えているので、1週間経つのが、あっという間だった。
土曜日になり、ラーメン屋に向かった。
反省を生かし、今朝は、開店よりも30分も前に店に向かったが、すでに行列は作られていた。
前回見た、行列と同じくらいの人がすでにきていたのだ。
子供から老人まで、さまざまな人が列に加わっていた。
しかし、開店する前に前の人が何人か帰って行った。
暇つぶしをするわけでもなく、視線を泳がせていると、とあるポスターを見つけた。
『時給1200円 スタッフ募集、面接なしですぐに入れます』
最近は、ラーメン屋ではなくて、色々なところに貼ってあるな。
前回来たときは、店の中には、店長と一人の女性が居ただけだったので、人手不足で困っているのかもしれない。
ここまで、行列ができてしまったら大変だろうと思った。
もう少しで入れるという時に後ろから話し声が聞こえてきた。
「初めは、赤字だと思って、店長に聞いてみたんだけど、行列のおかげで売り上げが上がっているんだって、俺も先週バイトだったんだけど、寝坊しちゃったよ」
若い男の声が後ろから聞こえてきた。
「次の方どうぞ〜」
店の中に入ってみたが、店員が二人いるだけだった。
「すみません、ここってバイト雇ってるんですか?」
「バイト? 興味ありましたらこれに書いてありますよ〜」
その紙には、行列バイトと書いてあった。
「いやぁ〜まさか寝坊するとはね、考えてなかったよ」
前の男が店に入っていった。
「でもさ、プラマイゼロで食べ物が食べれるのもいいよな、最近では、この街全体が、そういうバイトが流行っているらしいよ。時代だよな」
「やっぱり、このバイトのいいところは、ただ並んでればいいと言うところで、特に大学生なんかは、行列に並んでいる時に勉強をして、食べずに帰っていく人もいるらしいよ。」
「行列に並びたくなる人の心理を使った戦略って、すごいよな、全く」
「次の方どうぞ〜」
「おっ、呼ばれたな」
店に入ると、先ほどの前に並んでいた男がバイトのパンフレットを読んでいた。
その男は、小難しい顔をしており、手のつけられていないラーメンは、すでに伸びきっているようだった。
「店長、チャーシュー麺、二つ」
「あいよ〜」
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