ショートショート 『違和感センサー』

ショートショート

頼む、間に合ってくれ。
心の叫びが、目の前にいる花嫁に聞こえていないか心配だった。
目の前では、白い服に包んだ彼女が、優しげな笑みを浮かべていた。

朝起きた時に引き出しから、机の上に出した、家を出る時は、、
だめだ、

確かに家を出る時にセンサーは発動したような気がしたが、いつも通りそれを無視してしまった。
その一瞬を無視したせいで、大切な日が、最悪の思い出になってしまう。

私は、願った。
彼女を悲しませたくなかった。
その時、ゆっくりと扉が開く音がした。
そこには、息を切らせた友人が立っていた。

 

友人からは、ひどく叱責された、友人はすぐさまかけていった。
本当にやってはいけないことをしてしまったと後悔をした。

結婚指輪を忘れたのだ。
乱れる呼吸を整えると、ゆっくりと声を出した。
「はい、今向かいます。」

 

なんか、おかしいなと感じる時は必ず、忘れ物をしている。
それを知る時というのは、忘れ物を見つけた時かそれに気が付く時だ。
彼女に会う前に違和感を無視すると必ず、何かがあった。
財布を忘れて情けないところを見せたのは、一度や二度ではなかった。

だが、違和感が外れることもあったのだ。
友人を彼女に紹介した時、二人はすぐに共通の話で盛り上がっていた。
どんな話をしていたのかを聞いてみると、趣味の話だった。
友人が、読書を趣味にしていたなんて気が付かなかった。
本を持ち歩いているのをみたことがなく、待ち時間には携帯をいじっていた。

電子書籍でもみていたのだと思ったが、動画をみているようだった。

 

彼女の笑顔が崩れる前に祈った。
間に合ってくれ。

その時、扉がゆっくりと開いた、友人の真剣な表情が見えた。
やった、これで一安心だ。

「みつきさん、初めて会った時にあなたに一目惚れしてしまいました。
あなたの笑顔をずっと、隣で見ていたい。あなたのことを幸せにします」

予想外だったが、これが違和感の正体だったのかもしれないとふと、感じた。
彼女は、ついていくはずがないと思ったが、僕の視界からすぐに消えた。

去り際、彼女は足元に何か落としたようだった。

式場が騒々としている中、花嫁が通り過ぎた、場所には光り輝く何かが落ちていた。
察しは、ついたがそこに視線を向けることはしなかった。

今、自分がすべきことは花嫁の背中をただ眺めていることだと思ったからだ。


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