卵を孵化させたい男 第十九話 通り過ぎた時間

今日で20日目です。
中は、まだ水が溜まっていました。
検卵をしてみましたが、中が、黒く、細部まで見えない状態です。
鶏ですかね。
鶏は、いいイメージがないので、鴨がいいです。
親鳥は、贅沢言ってられませんね。
命がこうやって、育っている一方で、自分の身の回りの人達がどんどん小さくなっていくような気がします。
久しぶりに見た両親の顔のシワが深くなっていたり、髪が薄くなっていたり、祖父母が、腰が曲がり、小さくなっていくというのが、怖いです。
1日がとてつもないほど長く感じた子供の時と比べると、大人になるというのは、残り時間を駆けているような感覚です。
気が付いたら、5月も終わりに近付いていますね。
最近では、この言葉が、耳に残ります。
希望は朝食には良いが、夕食には良くない。
フランシス・ベーコン
夜になると、焦ります。
寝る前にやる気が出ても寝ることに支障が出るだけです。
時間の流れが、早く感じるだけで、気持ちが沈んでしまうなんて若い証拠でしょうか?
時間について考えたことは、ありますか?
人生の3分の1は、寝ていますし、食事は、人生のうち、6年ほどの時間を使っていると言います。
人生で親子が、一緒に過ごす時間がどれくらいか知っていますか?
約9年です。
社会人になると、顔を合わせる時間が少なくなっていきます。
親の余命を日数にした時間が、残りの親との時間らしいです。
親が、65歳であれば、残りの時間は、20日ほどだそうです。
嘘みたいな話ですよね。
いつでも家族と会えると思い生きていれば、家に帰ることも面倒になってしまいます。
1年間で、親と会う日数は、平均して6日、そのうちに親と顔を合わせる時間が約4時間だとすると、1年で1日という計算になります。
ちゃんと恩返しは、できていますか?
私は、親に話しかけられますが、自分からはあまり話しかけません、このまま終わってしまうというのが、なんだか悲しく感じます。
残り時間が、短いからという問題ではなく、私の中で、何かが邪魔をして、うまく話すことができずにそのまま諦めてしまいます。
私の最近の後悔は、親に「誕生日おめでとう」と言えなかったことです。
日付さえも覚えておらず、親は特に変わった様子はありませんでしたが、傷ついているのかを考えてしまいました。
私は、誕生日の前日までは、思い出したりしますが、当日になって、誰かに祝われた時にやっと気がつきます。
自分では、他の1日と変わらなくても、そうやって祝ってくれると、少し嬉しいですよね。
誰かが、おめでとうを言って、それを聞いていたら祝うと言った感じです。
自分では、普通に接しているつもりでも相手から冷たく、思われているかもしれません。
感情を出すことが、上手くできないのは辛いですね。
卵が育っているのは、とても嬉しいです。
熱を与えているから卵が育つのですが、愛情を与えているから育つと勘違いさせてくれます。
鶏でも鴨でも他の鳥でも大切に育てようと思います。
自分は、生き物を大切にできるという自信を得たいからです。
自分に興味がないから、記念日も忘れるのだと思います。
人生をただの消化期間にしたくないです。
卵が孵ると決まった訳ではありませんが、頑張って欲しいです。
「シェンロン、孵って歩けるようになったら、一緒に散歩でもしような」
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