卵を孵化させたい男 第十話 差し伸べる手

今日で11日目となった。
卵 孵化記もちょうど折り返し地点に入る。
卵の変化は、微々たるものだが、目にみえる変化を感じる瞬間がある。
今日もその卵の変化について書いていきたい。
先日までは、血管が見えているだけだったものも、違った形に変わった。
卵の中の核を中心として小さな輪が出来上がっており、その周りには外側に向かって這っていくのように伸びていく血管が見られた。
今後の変化過程を調べてみた。
血管はさらに大きく広がり、その後、中心が塊に変化する。
その塊が雛の形に形成されると中の液体も吸収されていく。
そして、生まれる。
1週間経って、発見した血管は、細く、気弱であり、気のせいかと思われた。
だが、今の卵の内側にある血管は、その存在感を示しているようだ。
太くて力強く、繊細にみえる。
卵を片手で、持つ時のように卵の内側の血管は、壁を這い、私に手を伸ばしているようにも見える。
広がった手は、握り拳のようになり、やがて鳥へと変貌する。
私は、卵の中をライトで照らすことでしか確認することができない。
内側では、一体どんな変化が起こっているのかは分からない。
変化を言葉に表現してしまってはつまらない。
生まれる段階を簡単な言葉にするよりも、届かない感覚で卵の輪郭を捉えていたい。
型にはめてしまいたくはない。
ただ、一つ言えることは、卵は成長をしようとしているということ。
私が、与えているわずかな温度を頼りに、変化を望んでいる。
卵を見ていると、懐かしさを感じることが多い。
こうやって文章を書いていく中で、感じる共通点。
人が変わるには、当人が頑張るしかない。
周りは、サポートをすることしかできず、それが本人の成長に繋がることを祈ることしかできない。
卵を温めるのは、環境なのだ。
卵をガチャポンの卵で孵そうとしている人は、私以外いないだろうと思う。
確実性を選び、一度に多くの卵を孵化させようとするだろう。
一つの卵だけを育てるということは、効率が悪いからだ。
だが、卵を通して見る世界は、話題が尽きない。
一つの卵だったからこそ見つけられた感覚がある。
私たちは卵だとも感じる。
成長を望み、周りの温度を頼りに変化を続けている。
周りの温度が冷たかれば、卵は成長を止めるどころか、孵化すらしない。
卵は私たちであり、環境や周りの温度も私たちだ。
誰かを温め、誰かに温められる。
誰かの成長を促すことが、自身の成長にも繋がればいいと思う。
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