野生動物

最近、熊が出没し人間を襲うということがニュースでよく流れる。実際にオレンジ色の服を着た猟友会の人たちが肩に銃をかけて山に入っていくという映像があった。その後テレビでは銃声が何発か鳴り、熊の駆除が完了したという報告が伝えられる。人を襲う映像は熊の恐ろしさを感じるが、駆除に関してはあっけないなと思う。私の祖父も猟友会だから実際に猪を仕留めるところを見たことがある。その時もあっけないと思ったことを今でも覚えている。
ハンターという言葉を聞くとどうしてもFPSゲームのように動いている動物を射殺するという映像が頭に浮かぶ。だが実際の狩りというのは一方的であり、あっけないものだと私は思う。罠を仕掛け、犬を使い、やがて動けなくなった動物を殺す。命の取り合いをしているはずが、結局、人間は安全圏から命の主導権を握っている。私は対等ではないと思ったし、ずるいと思うこともあった。
今日もそうだった。罠にかかった猪がいて、猟犬がその動けなくなった猪の首元に噛みつき、猪は低い声で鳴いていた。前足が締め付けられているから体を不自由にし、犬に対して攻撃をすることができない。犬は尻尾を振りながらしつこく首元に噛みつき、時々、猪は強く鳴いていた。威嚇なのか、それとも痛みからなのかは分からないが恐らく両方だと思う。
私はかわいそうだとか、痛そうだとは思ったりしなかった。実際、かわいそうだと思うのが普通だし痛いのもそうだろう。だが、決まっていることをいちいち考えるのが億劫に思ったのかもしれない。私はなぜ、犬が尾を振っているのか、ということでだったり、猪の胸に刺されたナイフとその傷口から噴水のように流れる血を見ていた。最後の最後、死ぬ直前の猪の声は鳴き叫んでいるように耳に響いた。
動けなくなった猪の体を触っていた、毛並みは硬い。腹を人差し指で強く押すと、生き物特有の柔らかさのようなものと温かみを感じた。足首を掴んだり、蹄の隙間の肉を触ったりしていた。温かみの残った体は柔らかく、次第に愛情のようなものが湧いてくる。それは猪がまだ子供だったからかもしれないが、私には分からなかった。
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