崖際で

私の脳内

私は、何か考え事をしながら作業をすることがよくあった。視界の中で日常を見ているとき、ふと途中で意識が飛んでいく。それは、まるでテレビのチャンネルを切り替えるようなもので頭の中で目の前のことをただ茫然と眺めている。その間、意識が妄想へと寄り道をするのだ。やがて、意識が現実へと戻るとその空白を埋めるように日常が追いついてくる。それは現実の一瞬だったかもしれないが、妄想というのは鮮明であるほど、時間が長く流れているような感覚に思う。
そして、私は数秒前に妄想に入った自分を恨み、そのきっかけとなった数分前の倒れた木を恨んだ。私の意識が戻った時、車の右の前輪が崖にはみ出していた。車体は傾き、なんとかバランスを保っている。私は車を後退させようとしたが、タイヤが滑って動かなかった。自分の陥った状況を見ようと一度車から降りてみることにした。崖側に傾いているせいか、ドアは自然に開いていった。車の前に出ると、車は大きく左へハンドルを切れば、もしかしたら脱出できるかもしれないと考えた。しかし、崖下は5mほどあった。私は悩んだ挙句、サイドブレーキを引き、車から降りた。私は諦めることにした。

裏山へと通じる道は細く、草が生い茂っていた。右は木が生えており、左は崖になっていた。崖下にトラックが落ちてしまえば転倒してしまうだろう。先日トラクターに乗っていた老人が横転して亡くなった事故があった。そんなことを考え、車がなるべく崖側に寄らないように気をつけながら運転をした。
トラックを方向転換させるためには、広場のようになっている場所が必要だ。一本道で細い山道、その中でいつも使っている広場に向かっていたのだが、そのすぐ手前に木が倒れていた。道を塞ぐ気は老いた木で、軽かった。直径30センチほどの木は根元が捩れており、そのまま若い木に寄りかかるように倒れていた。
私はその木が酷く不自然に思えた。まるで、この先へは行ってはならないと言われているようにも思えた。そしてノコギリを持ってくるために無理に方向転換をしたのだ。

何度も車を前後させた挙句、木に車を擦り付けながら方向転換をしたせいか、私は疲弊していた。あの不自然に倒れていた木のことを思った。巨人が木を握り、絞ったような捩れ方だった。狭い場所に車体を入れ、前輪は滑り、トラックの荷台が木に当たり、私はストレスを感じていた。なんとか、車を擦りながら前進させた。肩で息をしながら、汗をゴム手袋で拭った。私はあの捩れた木のことが気になり、意識が戻った時には前輪が崖からはみ出ていた。

 


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Posted by yuuya yamaguchi