骨と皮とドーナツ

私が子供の頃、よく家に来ていたおばさんがいた。その人は必ず、ミスドのドーナツを家に持ってきていて、私たちはそれを喜んで食べていた。私はそのおばさんのことを祖母の姉か妹だと思っていた。だが、どうやら祖母の同級生だったようだ。その人には私と同じような年の孫がいたはずだった。
おばさんは、肺が悪いという。少しの上り坂であっても息を切らしていた。おばさんは背と尻の肉が削ぎ落とされたようで見すぼらしい印象が感じられた。脂肪がほとんどついていなからだろう。筋肉と骨と皮が集まって動いているようで、なんだか硬そうだった。
祖母と話しているおばさんは、誰かの文句や批判を口にしていることが多かった。祖母が持ってきた食べ物を口に運ばずに、国や年金に対して文句を並べている。どこからそんな大きな声が出るのかと疑いたくなるほどの甲高い音がそれからは聞こえてくる。祖母が食べ物をしつこく、食べさせようとするが断ると、話を続ける。顔に皺を寄せ、人差し指を振りながら話すのがその人の癖だった。
おばさんはきっと、太っている人に偏見を持っているのだろうと感じた。それは私の直感でおばさんの使っている言葉は決して優しいものではなかった。強い口調だった。この人は身内に対しても辛くあたるのかもしれない。太っている人間に対しては容赦なく罵り、誰かしらを無意識のうちに傷つけるタイプの人間だと感じた。そして、その声を本人の耳が拾わないはずはない。鼓膜が自分の言葉を脳へと伝え、無意識のうちに洗脳される。人の口癖はその人の性格を表している。それは一番近くで聞いているのが自分の耳だからだ。きっとこの人は、他人を批判することで自分に強迫観念を持っているのだろうと思った。
運動をしなければ人は不健康になる。運動をするためにはエネルギーが必要で、それを生み出すためには栄養を摂らなければならない。その栄養を摂ることを拒んでいるようであれば、運動には結びつかない。年を取れば筋肉の質と量が落ちていく、若い人間と比べると筋肉がつきにくくなる。毎日10分でも運動をしていれば、長期投資になるかもしれない。だが、ほとんどの人がそれをしない。おばさんの肺がなぜ悪いのかというのは考えても仕方のないことだた。私はその人の生活に興味はないし、旦那がタバコを吸っているとか私が知り得ない情報について考えることは無駄に感じた。
私はドーナツを手にしていた。
「どうしたの? 食べないの?」
どうやら、考え事をしていたようだ。手で持ったポンデリングは表面の砂糖が少し溶けかけていた。一口齧ると懐かしい味がする。何も考えずに齧るドーナツは無垢の味がした。
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