カラス

私の脳内

「賢いカラスがいるんだ」祖父がそう言って話し始めると、遠くでカラスの声がした。空を見上げると、カラスが風にのりながら空を旋回していた。その後カラスは、羽に風を受け、器用に高い木に止まる。それは、私たちがいるゴルフ場で最も高い木であった。
「客のスマホを咥えていったんだ」
「弁当を食われたんだ」
そんなカラスの武勇伝を聞かされると、木に止まったカラスが特別なものに見えてくる。黒い鳥は私を見ている気がした。いったい何を狙っているのだろう。じっと、こちらを見ていたカラスは短く鳴いた。

近頃はソーラーパネルのコードを盗む人たちがいるそうだ。その話を聞き、コードに価値があることに驚いた。側溝で見かける石の板を持っていってしまう人がいるそうだ。野菜を盗む人、何かを盗っていく人、その人たちは行動に快感を感じているのか、それともただ、金にするために悪を働くのか、私には考えても分からないことだった。そのカラスはきっと、快感を感じているのだろう。スマホを盗ったからといって使うことも売ることもできないだろうから、人間の困った顔や、怒った様子を見て小馬鹿にでもしているのかもしれない。鳥の世界については知らないが、人間に対して優位を取ることがカラスたちの序列を表しているのかもしれなかった。

作業が終わり車に戻ろうとすると、祖父が笑っていた。
「カラスの野郎に入られちまった」
どうやら、窓を全開にしていたことがよくなかったらしい。ティッシュが荒らされていた。昼ごはんは無事だったのでよかったが、近くに人間がいると言うのにすぐさま行動を起こしたカラスが、やはり特別な生き物に感じた。どこかでカラスがこちらを見ているのかもしれない。私が狼狽すれば喜ぶだろう。私は何事もなかったかのように椅子を準備して座った。満天の青空の下おにぎりを頬張った。地面に鳥の影が落ちた気がした。


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私の脳内

Posted by yuuya yamaguchi