ショートショート 『いろんな趣味』

ショートショート

飲食店のテレビには、街角の人に趣味を聞くという番組が流れていた。
趣味の特集で、インタビューを受けた人たちが趣味を話すというものだった。

「あなたの趣味はなんですか?」
「えっと、これです、」
女性が取り出したのは、新聞紙だった。
「新聞を読むのが、趣味なんですか?」
「こうやって、嗅ぐのが趣味です」

スタジオからは、え〜というような驚きの声が流れていた。
私は、その趣味を変わっているなと思いつつ、どんな匂いがするのかを想像していた。

すると、後ろの席から声が聞こえてきた。
「何に意味があんの?」
「かわいそうな趣味だね」

どうやら、趣味の批判を行っているようだった。
どんな人物が話しているのかが気になり、顔を向けてみると、中年の夫婦らしき二人組が、食事に手をつけずにテレビを見ていた。
その人たちの目は、虫を見るような目をしており、鋭く光っていた。

テレビに視線を向けながら中年夫婦を想像してみた。
適当な飲食店に入り、店で流れていた番組を見ると、口に出して不満をいう。料理には手をつけずに金だけを払うと、ここの料理は最悪だと文句を言いながら店を出ていく、そのまま帰るとテレビをつけ、ビールを片手に夜まで愚痴を言っている。

気が付くと、番組は違うチャンネルに切り替わっていた。

そして、横からはごちそうさまという声が聞こえてきた。
先ほどの、中年夫婦が、お代を払い帰っていくようだった。

目線を戻すと、冷めて固くなった肉が、皿の上に乗っていた。

厨房に目線をやると、亭主と目が合った。
その目線は、先ほどの中年夫婦がテレビを見ている時に感じたものと似ていた。


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