ショートショート 『雑草の名前』

アスファルトの裂け目から生えた花は、俺の知らない花だった。
「雑草は、この世に存在しないんだよ」
ゆうは、足元に目線を落としながら俺に言った。
「どういうことだよ、草は草だろ」
「植物には、名前があるってことだよ、花や野菜だけに名前をつけているわけじゃないよ。大人にとって、価値のない植物はみんな雑草って言われているだけ」
ゆうは、ガードレールの下に咲いている白い花をちぎった。
「じゃあそれなんて植物だよ」
「これは、ハルジオンって言うんだ、貧乏草とも呼ばれてるよ、花言葉は忘れちゃったな」
「じゃあこれは、」
「それはね、、」
ゆうの知らない植物を見つけるのにかなりの時間を使った。
下らない雑草の話は、二人が別れる道まで続いた。
10回以上繰り返して、ゆうの知らない植物を見つけたのは、嬉しかったが、ムキになったせいで、話せなかった、別の話題が頭によぎった。
「学校の図書室に行けば、図鑑があるはずだよ、行ってみたら?」
「気になるなら、行ってこいよ。俺は、図書室なんて行ってる暇ねえからな」
「じゃあ、明日行ってくるよ、ついでに花言葉も教えてあげる」
そう言って、二人はいつもの分かれ道からそれぞれの家へと歩いて行った。
結局、ゆうから花の名前を教えてもらうことはできなかった。
次の日に学校に来なかったゆうは、火事で死んだらしい。
その日俺は、ゆうが答えられなかった花の名前を調べてみることにした。
図書館には、名前の知らない人たちが数人いた。
ゆうはいない。
だから、知らない植物の名前なんて、どうでもいいと思っていた。
雑草の名前を知りたい人なんて、近くにはいない。
そんなことを考え、図書館を出ようとしたが、ハルジオンが頭をよぎった。
ゆうの家は、黒く燃えた柱だけが残っていた。
火災の原因は、母親が火の管理を怠ったかららしい。
父親が帰ってきた時には、火は回っており、母親だけが助かった。
ゆうの家の庭にハルジオンを見つけた。
「貧乏草、、、」
ゆうに教えてもらったハルジオンという植物は、貧乏草という名前があるらしい。綺麗に手入れをしている庭には生えないのだそうだ。
それをみると母親のせいでゆうが死んだとしか思えなかった。
庭に生えたハルジオンをちぎると、それをゆうの家の前に置いた。
ハルジオンは、まだ蕾のままだった。
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