卵を孵化させたい男 第二話 温められる

謎卵と私の一ヶ月間

2日目

卵を拾い1日目、温度管理の難しさを知った私は、発泡スチロールを使い、温度管理を任せることにした。
お湯が入ったペットボトルをタオルで包み、発泡スチロールの中へ卵と共に入れた。

私が小さかった時は、よく風邪を引いていたらしく、母親が私を温めるためにペットボトルの湯たんぽを使っていたらしい。
母親の知恵を借りて温められた私は卵に同じようなことをしているのが、なんだかおかしかった。
風呂に入る時などはペットボトルにお湯を入れ、私が、風呂から出てくるまでの間に温めてもらうというのは、卵の温度管理をするのには大切だった。

何かある時に卵を持ってはいられない。
ペットボトルの交換ができない時というのは、自分で温めるしかなかった。
そして、寝ている時というのは、卵にとってとても危険な時間だった。
腹巻きの中に容器を入れ、体温で温めながら寝ることにした。
そうすれば、温度を保つことができる。

卵を孵化させるには、転卵と呼ばれる作業が必要だった。
1日に最低4回、卵を回転させるらしく、そうしないと卵壁に張り付いてしまい、孵ることが難しくなるようだった。

私は、自然界にいる親鳥を称賛した。

とはいえ、鳥が卵を温めるのは、卵が冷たくて気持ちがいいからだと聞いたことがある。
鳥が、ただ冷たい場所を探しているだけで、卵が孵っているとしたら笑える話だ。
私は、孵って欲しいという思いや愛情で卵が育つと勝手に思っていたからだ。
真実は置いておいて、私は、温度ではなく愛情だと思うことにした。

夜は、卵と共に寝ることにした。

ガチャポンの中で安全に温められた卵は、寝返りによって卵が割れることはなく、ポケットの中では温度が伝わりにくい問題も腹巻きによって解決した。

腹巻きに当たるガチャポンの冷たさには、慣れていった。
卵を孵すための機械は、高価で手が出ない。
ガチャポンは、今では300円で回せるものもある。
孵化させるための機械ではなくて、私は、ガチャポンと腹巻きを使うことにした。

まだ卵が孵るのかどうかは分からない。
卵が、有精卵なのか無精卵なのかも分からない。
一週間様子を見てみて、卵に変化があれば成功だが、時間が経過しない限りは、卵がどのようになっているのかを知る術はなかった。

ただ、温めているものが命を宿さない無精卵の方であれば、道端に落ちている石を温めているのと変わらなかった。
それでも、一ヶ月間は、様子を見ようというのが私の親鳥としての勤めだった。

 

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