卵を孵化させたい男 第一話 発見される

今日祖父が田んぼで、卵を拾ってきた。
そして、私は親鳥になることにした。
昼前だっただろうか、実家の田植えの手伝いをしている時に祖父に卵を渡された。
その卵は、田んぼの近くにある木の下に落ちていたらしい。
太陽の光を受けて、白く輝く卵は、少し泥がついていた。
興味があったわけではないが、祖父に渡されたものを突き放すのは、申し訳ないので、手に取ってはみたが、どうすればいいのか、ただ浮かぶ疑問は行き先がなく、結局地面に置くことにした。
私にとってそれは、ただの卵であり、汚く見えた。
祖父は、木の下でそれを見つけ、私に持ってきた。
その木には、鳥の巣がなくてポツンと落ちていたらしい。
親鳥がいない卵を祖父が育てようとしたわけではなくて、ただの興味本位で私のところへ持ってきたのだろう。
私は、従兄弟と卵についての話をした。
この卵は、食べることができるのか?
もし食べるとしたら、今食べるか、孵化させてから焼くか?
従兄弟と話をしているうちにもう一つの案が出た。
孵化させてみるかというものだ。
私は、その直感に従うことにした。
卵を祖父から渡された時は、どのくらい遠くまで投げられるのかを考え、他の生き物に卵が捕食されること想像が頭に浮かんだ。
母親に「卵を見つけたから、温めるものはないか」と聞いたが、母親にとって温めることとは、茹でることだと思っていたらしく、母親に任せることが急に怖くなり、とりあえずは、タオルに包んで日の当たる部屋に置いておくことにした。
昼飯に唐揚げを食べながら卵について調べてみた。
卵を孵化させるには、37.5度で、湿度調整をし、三週間から、一ヶ月ほど温めるらしい。
孵化させるには、専用の機械が必要だとも書いてあった。
卵は、光を当てると透き通っており、カラスが、ゆで卵を盗んできたという説は、そこで消えた。
どうやって温めればいいのかを模索している時に私の部屋の本棚の上に、集めているガチャポンの景品が並んでいるのをみた。
サウナをしている動物シリーズだ。
そして、その背後にあるものを見つけた。
私はその時、これだと思った。
ガチャポンの中にティッシュを入れると、その中に卵を入れた。
ガチャポンの中に入れておけば、誤って割ってしまう心配はない。
そして、ポケットに入れることで、常に体温を伝えることができる。
ポケットモンスターが頭をよぎったが、私はあまり詳しくはなかった。
ポケットの中にいる命に私は、細心の注意を払っていた。
買ったばかりのものを傷つけないようにしているような感覚だ。
私は、日の当たるところにガチャポンを置くとその熱で温め、ポケットの中に入れてを繰り返し、どのように温度を管理するかを考えていた。
その時の私の中には、すでに、母性のようなものが芽生えていたのだと思う。
初めてみた卵は、汚く感じたが、ポケットの中に入っていたものとは明らかに違うようにも感じた。
ポケットモンスターのように卵を持ち運び、卵から何かが生まれてくることに期待していたのだ。
いとこ名前をどうするのか尋ねられた。
卵を入れたガチャポンの容器は、願いを叶えるあの玉のようにも見えた。
橙色に光る容器は、ドラゴンボールのような見た目をしており、ポケットモンスターのように持ち運ぶことができた。
どちらから名前を取るか悩んだ私は、この卵のことをシェンロンと名付けることにした。
私がすることは、ただ一つ卵を孵す。
ただ、それだけだったが、確実に何かが芽生えた気がしたのは、私の気のせいなのだろうか?
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