雨

雨が降りはじめた。雨は平等に世界を濡らし、潤し、私はいい気分になるはずだった。両手を広げて空を見上げながら顔に雨粒を感じてもよかった。だが、雨はぽつぽつと肩を濡らす。そのたびに寒気を感じ、私は気分が落ち着かなかった。「丁度降ってきたな」作業が終わると、祖父は帽子を脱ぎながら空を見上げていた。後片付けを始める祖父を無言で手伝う。私たちが帰り支度を終え、トラックに乗ると雨は大粒になっていた。
祖父は寡黙だ。私はその無言が心地よくて窓の外を見ている。先ほど降り始めた雨は変わらずに降り続けている。
「そこの川は昔、氾濫したんだ。そこの電柱に赤い印があるだろ」祖父は電柱を指差しながら話し始める。
「みんな流されちまって、そこの高い所に引っ越したんだ」
その時も雨が降っていたのだろうか。辺り一面が湖のようになったなんて私は想像ができなかった。全てを流されてしまった人はどんな気持ちになるのだろう。命が助かってよかったと思うのか、それとも、何もなくなるというのはやはり絶望するのだろうか。
それでも、雨は私たちを平等に濡らしている。弱まり始めたと思った雨も、勢いを増し始めた。
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