見知らぬ道、見知った道

車を走らせていた。見知った道は私に安心感を与えてくれる。だが、同時に感じる退屈さは耐え難いものだった。
対向車とすれ違う時、その車が中央線を跨ぎながら走行していたことに気がついた。しかし、そんなことはどうでもいいことであったのかもしれない。すれ違った後であるし、もしも、事故が起きたならと考えたところで私にはどうでもいいことであるからだ。遠くに見える青黒い空は街から離れるごとに暗く染まっていった。
カーブに入るとライトが木々の幹を照らす。反射した木々は昼間に見た時よりも生き生きとしているように見えた。カーブを通り過ぎると、道が少し広くなる。見慣れた道は他に車がなく、ライトがどこまでも先を照らしていた。
遠くに老人が見えた。灰色のシャツを着た老人は骨のように頬がこけ左手を挙げていた。真っ直ぐと背筋を伸ばし、じっと道路を見ている。老人と一瞬目が合った気がした。顔の向きはそのままに目だけが、私の方を向いた気がした。私は気が動転し、普段は入ることがない小道へとハンドルを切る。対向車とすれ違うにはどちらかが、後退しなければならない。それほど狭い道だ。暗闇の中、私の車だけが光を独占しているようで、遠くに灯る家の光は点々としていた。
狭い道を抜けると、ようやく広い道へと辿り着く、しばらく道なりに進み交差点に差し掛かった時にそこが見知った交差点であることに気がついた。交差点の一体化したコンビニは不気味なほどに明るい光を暗闇の中に解き放っていた。コンビニの駐車場にはいくつかの車が停まっており、むしろ、その駐車場に車が停まっていないところなど見たことがないように思えた。コンビニに寄ろうかとも思ったが、特に欲しいものがなかった私は、青信号に変わった時に静かに左折した。
家に着き、車のドアを開けようとすると風に押されすぐに閉まってしまった。折れた木の枝が道に散乱していたことを思い出した。きっと、風に揺られて折れてしまったのだろう。近所からはカレーの匂いが流れてきた。見知った匂いだった。
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