天ぷら

私の脳内

天そばセットには、茄子、筍、ちくわ、そして、大きなえびが盛られている。店員の持ったプレートがテーブルへと運ばれてくる。目の前に置かれた盛り合わせを見て、口の中が唾液で濡れる。茄子を土台にし、えびが中央に立ち、横にされた筍は長かった。私は早速、えびを掴むと隣に座っていた知人に無言で渡した。私はえびが食べられないのだ。アレルギーを持っているため、喉が炎症を起こして呼吸が難しくなってしまう。
その時のえびは、何だか悲しげに見えた。えびは天ぷらの主役のようなものだろう。もしかしたら客は、まず初めにえびを一口食べ、そして最後の楽しみとして、端に置いておくのかもしれない。そして、えびもそれを期待しているのかもしれなかった。
えびを食べることができない私は、天ぷらを頼むたびに損をした気になることが多かった。なぜなら、天ぷらの主役を誰かに譲る必要があったからだ。私が食べないから、誰かに渡したくないからといい、そのままにしておくことはえびに対して失礼だろう。代わりにちくわを貰えることになったのだが、えびからすれば、「俺とちくわが同等とでも思っているのか」とでも言っているのかもしれなかった。私はちくわが嫌いではなかったので、同等だと思ったのだが。

「ここの天ぷら大きくて旨いよね」
知人にそういうと、返事もせず、頷きながらえびを頬張っていた。熱々の天ぷらがサクサクと音を立てている。私はその音に満足し、天ぷらが好きなのだと思った。

 


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Posted by yuuya yamaguchi