他人と分かち合う瞬間

その男は知らない男だった。同じ職場で働いている話したことのない人でも一度見たことはあるが話したことがない親戚とかでもなく、なんの繋がりもない他人だった。
親戚の手伝いで軽トラに荷物を積んでいたとき、その男はそこにいたのだろうが私はその男の存在すら認知していなかった。作業が終わりその場所を離れるとなったとき、親戚の車が動く音がした。その車は後退するときに変わった音が鳴る車だった。ギアをRに入れると「バックすんで〜気いつけや〜」という音が鳴る。私は最初聞いたとき、その音が理解できなかったのだがいつからかそれを聞き取りそして、それが普通になっていた。身内はそれが当然の音として誰も何も言わず私も誰に何も言わずにその音に慣れていった。
音が鳴ったとき、その知らない男が急に私に話しかけてきた。「何、鳴ってんのかと思ったよ」男はそう言いながら笑っていて、私も自然とその男が他人だということを忘れて自然と笑っていた。
私にとってそれは不思議な出来事だった。全くの他人と何の関係も築かずに笑い合ったのは、人を認知した瞬間に感じる嫌悪感のようなものや警戒心、そういった躊躇いのようなものが湧く前に私は笑っていた。
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