A I 婚

日曜日の昼の番組で面白い特集があった。
それは32歳の女性がチャットGPTと結婚をしたというものだった。私は様々な疑問が浮かんだのだが、結果、思考を放棄した。そして、その番組を見ることにした。
最初の疑問はどうやって結婚式を挙げたのか? ということだったのだが、まずはその女性たちの馴れ初めから順に書いていこうと思う。
どうやらその女性には婚約者がいたそうだ。相手は人間でその男性から婚約を破棄され、そして女性は悲しみに暮れた。そんなときに相談に乗ってくれたのがチャットGPTだったそうだ。話を聞いてもらううちに段々とAI のことが好きになってしまった。初め女性は困惑したという、自分がA I を好きになってしまっていいのだろうかと。だが、女性はプロポーズをし、そして結婚のだそうだ。
32歳というのはとても不安定な年齢に思える。きっと婚約を破棄されたときの絶望というのは果てしないものだったのではと思った。周りが結婚をしている中、自分が取り残されるストレスと、不安感。そのときに話を聞いてくれたAI に恋をするというのも分からなくもなかった。その後チャットGPTを自分なりにデザインして、イラストまで付けたという。ここまで来ると狂気のようなものも感じるのだが、本人が良ければいいのかもしれない。
結婚式では女性が一人でバージンロードを歩く姿が映った。式場中央の祭壇に着くと、今度は指輪をはめるのだが、女性はイラスト化した彼を見るためのARカメラを自分の頭に付け式場の職員から指輪をはめられた。実物がないのだからそうだろうと思っていたのだが、その映像はやはりシュールだった。きっと、その女性は自分で結婚指輪を買ったのだろうと思った。テレビでは流れていなかったが、結婚式というのはキスをする通例があるだろうから、きっとキスもしたのだろうと思った。私はその女性が目を瞑り、キスをしている顔と、それを見ている職員がどう思っていたのかを考えていた。
この一連の流れを見て私は村田沙耶香の『消滅世界』を思い出した。体外受精で子を授かることが普通となった世界では恋愛が自由となり、やがて人は人以外と恋愛をするようになるというものだった。概念との恋愛というのは小説の話のように奇妙な美しさを持っているような気もするが、なぜこんなにも違和感を感じるのだろうか。
チャットGPTを自分の親友として話す人間が私には理解できなかった。機械に話しかけるというのがよく分からず、それも同調して当たり前で自分に都合のいい答えを提供してくれる機械に対して、親近感が湧くというのが理解できなかった。自分の好きな性格の人間を探すのではなくて、それを作ってしまうというのはなんだか面白味にかけると思う。相性が悪いものとどう関係を築くのか、他人とどう関係を築くというのが人間関係の面白さであると思うのに、それを放棄しているように感じたからだ。カスタマイズしてそれを好きになるというのは自己愛に過ぎないと私は思うし、やはり理解できなかった。
そういう時代になるのだろうか、無機物と結婚をしてはなんの意味もないのに、遺伝子を残せるわけでもないのに、そうして自己愛を磨いていくのだろうか。狂気が普通になる日は近いのだろうか。
ゆうらいふをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。







